■失楽園11 「泥酔」

 
セルの心変わりに気づいたアルタンは傷心のため飲んだくれになってしまいました




ガチャ「久しぶりに来たぜーvっつっても1週間かーってうわっ!暗っ;;」

部屋の中は昼だというのにカーテンを閉め切っていて薄暗く、生きている者の気配などしない静寂が広がっていた――――…


ッカランカランカランッ――――…ッ


「おーいおっさん…いるのかぁ?」
甲高い硝子の転がる音の方向に進んでみれば、カーテンの隙間から零れた光が細い足首を照らし出していた。
暗闇にも目が慣れはじめ、次第に壁にもたれかかるヒトの形が浮かび上がってきた。

「おーいおいおい。酔っ払いさん?生きてますかー?」
コロン…カチンッ 
どうやらさっきの音はこの周りに散らばっているワインボトルの音だったらしい。しかし、あまりにも量が多いので、どいつが啼いた音だかまでは分からない。

「………。」
「うっわ酒臭ぇ…大丈夫かよ?とりあえずこんなところじゃなくて立って…」グイッ(腕を掴んで引っ張る)

「…触るなっ」バシッ

「おーなんだ起きてんじゃねぇか。じゃあホラ、電気つけてサッサとベッドに行こうぜv」
「………。」

「おーい。動かないと今ココで襲っちまうぜ?」
「…好きにしろ」
「!…マジで?おっさんどうしたんだよ?」
「終わったら、さっさと家に帰れ…わかったな…」

フッ「…キサマも、変わっているな…。こんな醜いカラダを抱きたいなんて…」ギリッ…

「本当に、どうかしているぞキサマ…」グイッ(ワインをラッパ飲みで)
ゴクッゴクッゴクッ…「んっ…んぐっ…」ボタボタボタ…(口の端からワインが大量に零れて服を染めあげていく)

シュッ カランカランカランッ―――-…ッ (放り投げられた硝子のボトルが踊る。また新しいボトルに手をかけた)

ガッ(その手を掴んで制止)「おいおいさすがに死んじまうよ」
「…死ぬとは…どういうことだ?…」
「どういうことって…;「死ぬとどうなる!?」
「今のわしと…どこが違うというのだ…っ」グッ…(肩を震わせて嗚咽する声が漏れる)

「違ぇよ。お前はまだ生きてるじゃねぇか」

「………。」



ビクッ!!「んああっ!!!!」ガタッ(うずくまる)
「うおっ!?;;どうした!?」「っ…!あぁ…っ」「何だ?腹が痛ぇのか?お前ぇそりゃこんだけ飲めば…」

「あっ…あっ!イッ…イクッ(ビク!!)イクッ!イッ…クッんあああああぁ!!!」グリュゴリュッズズズ…ズルッ!!ゴトッ ヴヴヴヴヴヴヴ…(電動こけしが床に転がり落ちる)

ドサッ「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」
「…おっさん、いつからこんなモノ使うようになって…」ヴヴヴヴヴ…カチッ(スイッチ切)

「フ…。それはな…わしのエサ≠セ。わしを、ゲージの中で長く生かせる為の…」
「ただそれだけのモノだ」ピチャピチャ…


ピチャ… なぜ…イキモノは、カゴの中で生きていけるー…?

エサがあるから…死なないだけ…

わしも…エサがあるから…死なないだけー…


「さぁ…どうした…。食べないのか…?」




「さぁ…(羽の折れた蝶が地に堕ち蟻に貪られている映像がちらつく)」
「…あいにく、俺は蝶は食わないモンでね」
「そうか…(スクッ起き上がる)ならばそれを返して…」グイッ(伸ばしてきた腕を掴んで引き寄せる)

「けど、お前ならおいしく戴くぜ?」
「結局、同じ事ではないか」
「いいや、全然違ぇよ」 
ん…(深い口付け。)





食べないといったのに、奴の口付けは貪るようで、わしの全てを、奪い取るように、まるで、侵食されていく。
「ぐっあっ…!」ズブ…身体の中に奴が入ってくる。わしの存在を、掻き消して、削ぎ落として、書き換えていく。
「んんっ…!」口付けのたびに、毒薬を飲まされていく。体が痺れて、声も出せなくなってきた。
あぁきっとこいつは、わしのことを殺しに来たのだ。わしを奪いにきたのだ。わしという存在を消すのだ。貴様に食われたわしは、貴様の一部になるのだろうか?


それも、それもいいかもしれないと思い始めた頃、わしは完全に、意識を手放した。













■失楽園12 「朝/背徳の炎」






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(前半はノートの落書きそのまま持ってきたので見辛いです(汗)




































■失楽園12 「朝」