チュンチュンチュン…
「………ん…。」
光…。目の前がぼやけて、頭もボーっと…
ズキッ!!「!?」
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン…「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
頭の中で突如始まった金管楽器と打楽器のみの音楽会。頭が割れそうに痛い。
「くっ…あぁ!?なんだ…コレは!?」
痛みに声を荒げれば自分の声までもが頭の中で響いて苦痛に変わる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
騒がしいおっさんの声が聞こえた気がして、キッチンからコーヒーだけ持って行ってみると、バサバサとシーツの上でもがいている足だけが見えた。
「おー起きたかー!?」「!?☆」
「ば、馬鹿者ぉーーーーー!!!!!!こんな時にイキナリ大声出す奴がおるかぁーーーーー!!!!!!!っう…!!」
威勢よく返事をしたものの、返ってその威勢の良さがトドメを刺す結果になってしまったようで、おっさんはベッドに突っ伏して大人しくなった。
「あ〜…悪かったよ。大丈夫かぁ?」
「………。」ギロッ(目尻に涙をためながらシーツの隙間から睨)
「あ〜分かった分かった。とりあえず顔洗って来い。一人で行けるか?」
パシッ
差し出した手はあっさり振り払われ、フラフラと階段を下りていくおっさんをただ見送るしかなかった。
「あんな飲み方するから…酔っぱらいめ」
フラ…「おっと、」一瞬足元がふらついたが、どうにかコーヒーは大人しくカップに納まっていてくれた。
「はは…人のこと言えねぇや。俺も相当酔ってるなぁ飲みすぎか?」
「いや…食いすぎだな…」
キレイナキレイナチョウノゲンソウニトラワレタ―タダノヒトリノオンナ―触れた肌から、まるで、酔わされていくようだった。
口付けのたびに種を植え付けられて、俺の身体中に根をめぐらせ、俺の中のあらゆるものを奪っていき、その養分で美しい花を咲かす。
考えを、理性を正義を失ったアタマでは何も出来ずに、カラダだけがただ暴走していく。あぁきっとこいつは、俺を乗っ取りに来たんだ。
空っぽの俺のカラダは何の意志も持たなくて、ただこいつに支配される。
おっさんの言いなりになって、俺はおっさんの道具になるのだろうか?
それも、それもいいかもしんねぇなぁって、そう思い始めてからの記憶は、思い出せない。
「………。」
「お、風呂に入ってきたのか。どうだ?さっぱりしたか?ホラ」
「………。」(差し出されたコーヒーカップを受け取る)
「あ、でも温くちまってるだろ?入れなおしてきてやるよ」
「…いい」(アルタンは猫舌ハァハァ!!)
「そっか。そういや台所勝手に借りたぜ。ホラ、飯食え」
皿の上には卵のサンドイッチ。(彩りに添えられるトマトとかは一切なし)
(少しビックリしてそれから)「……いい」
「食欲が無いのはわかるがなんか食わなきゃ薬も飲めねぇだろ。な?」
「……モグ」(しばらく考えてしぶしぶパクパク)
「しかし…貴様が…料理など、出来たとは…意外だな」モグモグ
(アルタンはベッドの上座ってお皿持ってモグモグ。戴宗さんはベッドサイドテーブルにコーヒー置いて椅子に座って向かい合わせ)
「軽いつまみぐらいなら自分で作るからな。酒飲みは料理必須だぜ?www」
「ふん…くだらん」ゴクン
「ホラ、薬飲め」(コップ水と薬の袋渡してやる)
「…コレで、借りを作ったと思うなよ。わしは、別に…」
「分かってる。俺が勝手にした事だ気にすんな」
「…あぁ、そうだな。キサマが帰らなかったのも、貴様が選んだことだしな」
「あぁ…」
風に膨らんだカーテンがふわりと帆を翻し、瞬間風が頬を撫ですり抜けていく。
世界はそろそろ昼になろうかという時間で、外では穏やかな住宅街の声が聞こえてくる。
外では今日もいつもと変わりなく、毎日の退屈な時間を繰り返している。
「無断外泊ねー…それに無断欠勤。こりゃ大事だ」
「貴様の行動は、まったく理解できないな」
「俺もだ」
「またか。いいかげん貴様は自分の意志で行動してみたらどうだ」
『…誰の所為だよ…』ボソッ
「? 何か言ったか?」
「いーやぁ…」
風がまた二人を優しく撫でた。半分ほど水が入ったコップの口を、指でなぞる。
薬が効いてきたようで、頭の中の打楽器のコンサートは、いつの間にか終演していた。
ベッドテーブルの引き出しに手をかけて、中の箱から真新しい葉巻を取り出して咥える。
「タバコ吸うと老けるんだってよ。知ってた?」
「あんな安っぽい嗜好品と一緒にするな」
言って葉巻の先を噛み千切って、火をつけた。
フー−ーー…
目の前を一瞬曇らせた煙は、真っ白な壁に吸い込まれていった。
「…なぁ、俺にもくれよ」
戴宗のヘラヘラして笑う顔を一瞥して、箱の中から新しいものを取り出そうと横を向いたら、
唇から葉巻の感触を消されて、代わりに奴の暖かな唇が押し付けられた。
「!ッー…んっ
…んっ」
振り解こうともがくわしの、右手が奴の頬に当たる前に、引き寄せられていた肩を離された。
「ッ!プハッ!ハッ…ハァッ…
ッんの馬鹿者!!何を考えてッー…」
「ハハッよくこんなクソ甘いの食えるなww」
フー…
視界が白くたゆたう。目の前の葉巻を咥える男の姿が霞む。
暖かな時間。緩やかに流れる時。
昨日の記憶は消えていないのに、過ぎ去った過去が、余りにも色褪せて見えた。
わしはこいつに、安堵感を感じているのか…?
…馬鹿馬鹿しい…。もしそうなら…
「そう思うのなら返せ」
「返して欲しい?」
ククク…声にならずに、白い歯を見せながら笑っている。
「これで我慢してv」
再び重ねられた唇。甘い味がほのかに伝えられる。
味と共に奴の舌が熱を伝え、わしの口内を掻き回す。
「んんっ…ふっ、んぁ…はぁっ」
いやらしく水音をたてられ、唇どうしが離されても、微かに糸が伝った。
「おっさんはまだ酒の味がするなぁ…」
そう言って後ろのベッドに倒され、首筋に口付けられた。
「まだ酔っているのはどちらだ…いい加減に、しろ!」
抵抗する腕にも同様に口付けられ、続けてピンクの舌をちろりと見せられた。
正直もう、嫌ではなくなっていた。こやつの感触が、暖かな舌が、熱が。
もっと、もっと熱をよこせ。貴様のその芯の奥、昂る魂を。
背徳の炎に焼き焦がれたその魂を、よこせ。
奴の背に手を這わせ、何度も奴の名を呼んでやる。その度に青白い炎が、身を焦がしていくような気がした。
コイツと、燃えながら堕ちていくのも構わない。
さぁこの翅を焼き払ってくれ。もうどこにも行けない様に。
二度と、戻れないように―…。
■失楽園13 「匂い」
「朝」
戴宗さんが二日酔いガンガンアルタンを(わざと)大声で起こすとか、そんな意地悪しないと思ったので変更☆
アルは一人でアタフタして戴宗さんは何だコイツ?って見てるのがいいんだよ!!!!!!!!!(ザ☆片思い)
んーノートに書いてない、インスピ直書きだとコメディ色が強くなるなー
まぁでもここから最終輪まで一気に堕ちていくんで。最後の癒しだよなー。たとえその時間が、偽りの安らぎだったとしてもー…ねぎさん擬人法好きだよなーとか思った。
もうちょっと戴宗さんの意識手放すのアルと旨くシンクロさせたいなー。