■失楽園15 「檻の中」




ピシィッ!! パシィッ!!

「あぐぅ!!…っ」
背中に打たれる鞭が、わしの肌の感覚を犯していく。

8回目の失神をしたころ、セルバンテスが部屋に戻ってきたことによって、全体重を吊るしていた手錠が外された。
ドサッ 「…うぁッ! ハァッ…ハァッ…」
打たれて熱を持った身体には、ヒヤリと冷たい床が心地良かった。倒れこんだ姿のまま、荒い息を整えようとした。しかし、

「主人の前で失礼ですよ」 グイッ!! 

「ッ!!!?ぐぅっ…!!」瞬間、わしの首に嵌められた皮製のベルトが、首に食い込み息が止まった。
前屈みにうずくまるわしの身体は、自分の意思とは関係無しに起き上がり、静止した。
先ほどまで鞭を振るっていたスキンヘッドの男が、わしの首へと繋がる鎖を勢いよく後ろに引っ張ったのだ。
「おやおや息が出来ていないようだよ?放しておやり」
「はい」パッ(鎖を掴んでいた手を放す) シュルッ、ドサッ!!
「かはっ…!!ゲホッゲホッ…」
あまりにも無造作に手を放した為、わしの身体はまた自分の意思とは関係無しに前に倒れこみ、勢いよく床へと頭を打ち付けた。

「ケホッケホッ…ぅ、すまな…ぃ…」
出てくる言葉はそれ以外に無かった。

「ケホッ! 許して…くれ…わしが…愚かだった…ッ」
ゆっくりと身体を起こし、奴の足元へと這っていく。
「すまない…セル…許し…」
ただひたすらに、足元に跪いて声をあげた。

すまない…すまない…

許してくれ…許してくれっ…

わしは…どうすれば…ーーーーーーー

またわしは、どれだけ声をあげても取り戻せないものを、失ったのか…――




許してくれ…許してくれっ…

わしが愚かだった…

わしは、どうすれば良かった?

お前に何もしてやれなかった…

この子に何をしてやればいい…?







わしはどうすれば―――――…





















頭の中で何度も何度も叫んでいた。

何度も何度も、泣く事もできないまま…























ピシィッーーーーーーーーッ!!

背中に痛みが走る。






まだ、足りないのだ。






「ッーー…セ、ル…許し」

許してくれ…

どうしていつもこうなるのだ…





















あの苦しみから抜け出せたのは、お前がわしの手を引いてくれたから…

今の苦しみは、お前がわしを闇の中にほうっておいたから…

なぜ…あんな冷たいところに閉じ込めておいたのだ…





わしは…わしは…






















      






























「そうだ…いいことを思いついたよ」

「……?」ハァハァ…
「君も一緒に来ればいいんだ!」
「!!」
「ね…アルは一人が嫌だったんだろう?だから他の男が欲しくなっちゃったんだ。だからこれからは、一緒にいた方がいいよ」^^
「セル…ッ!セルバンテス…!!」Vv パアァッv

やっと、わしはこの闇から解放されて…お前と一緒に…(檻(カゴ)から出て行く蝶のイメージ)

「ねぇ、イワン。確かスイスの方に城を買ってあったよね?ほら、山の中にある古城をさ」
「はい、あります」
「そこのさ、内装を整えて、アルはそこに行こうよ」

「し…ろ…?」
予想していなかった言葉に、疑問符が頭をよぎる。

「そ、アッチの方がまだ僕の仕事の方に近いし、コッチよりももっと会いに行けるよ♪」
「?…会いにって…キサマはどこにっ…!」
「世界中にさ!僕は忙しくて、一ヶ所になんて居られないよ」

檻の外には、もう一つの檻が見えてきて…。

「でも大丈夫だよv城にはちゃんと召使をたくさん置いとくからさ。そうだ!なんなら、サニーちゃんも一緒においでよ」
「…サニーは学校があるぞ?」
「学校なんか行かなくても、優秀な家庭教師を何人か雇って、ナカで教えればいい」
「もちろん、アル、君の夜のことも忘れてないよ。そうだ、イワンを連れて行けばいいよ。毎晩可愛がってもらうといい」
「ほら、これで寂しくないだろう?」



「…………」

震えだす身体を、ぐっと抑えた。

声が漏れそうなのを…必死に…堪えて…













涙が、溢れないように…―――――――








































■失楽園16 「擦れ違い」






















ヒドイ!!(話の内容が)
前回はアルタンがひたすら謝る話。
アルタンが素直すぎるって?だっから偽盟友の時も言ったでしょ!アルタンは自分が悪いことしたなぁって思ったら素直に謝る子だって!ハァハァ!
今の悲しみや苦しみや、どうしてこうなったのかが、昔の、扈三娘を失った時と被るんだね。
お前とだったら幸せになれると思ったのに…

アルタンの台詞、(かっこ)内に入るのはなんでしょう?

答えはずっと言いたかったけど、一度も口に出さなかった言葉。

  寂しかった… 

結局セルは分かってくれない。(分かってやっているのか!?どうなんだ!?)
檻からの開放かと思ったら今度はもっと頑丈で巨大な檻の中に…
しかもサニーちゃんも巻き込むという!!
アルはサニーは学校で同年代の友人達に囲まれて暮らしている方が幸せだって知ってる。
なんだろうね。アル言い返さないのかな。「嫌だ!!」って言い返さないのかな。
言い返すと、もっと酷いめや寂しいめに合ったり、捨てられたり、するかもしれないのが怖くて、言い返せないのかな。
そんな夫婦ってなんか悲しいな。主従関係に近いね。
妻を失った悲しみの中からを助けてくれた恩と、長い間の放置でセルだけが唯一の救いだと、長い時間をかけて、アルの首に首輪をかけて鎖で繋いだんだろうな。
セルはアルのことどう思っているんだろうなー
ていうか戴宗さんもどうなんだよなー
戴宗さんもだんだんアッチの家族の時間にルーズになってきたけど、でも向こうの家族を捨ててまでアルタンと一緒に逃げてくれるかな?
あー続く。真剣に切ない。