■失楽園2 「卵焼き」

ピンポーンッ―――――…



ガチャッ…「お…あんた…」

見慣れない顔、昨日の今頃は泣きそうな顔してたっていうのに、何を思ってココに来たのか。

玄関を開けたらおっさんがいた

「コレ…」

昨日の事で文句を言われるのかと思った予想に反しておっさんが出したのは昨日の肉じゃがのタッパだった。
明らかに何か入っている。

「おいおい…何もそのまんま返す事無いだろう…ウチの嫁だってなぁ、あぁ見えて傷つくんだぜ?」

「いいから受け取れ、借りを作るのは嫌いなんだ」

グッ…バタン…

「帰っちまった…」

玄関でタッパ抱えて呆然…コレどう説明すっかなぁ…

「おや?誰か来たのかい?」

「へ? あ、いや…「あぁお隣の奥さんが返してきてくれたのかい!ヤダよぉ、私も挨拶したかったのに…で?どうだったって?」

カパッ

あ…ヤッバ

「こりゃぁ…」

恐る恐る見てみれば一面の黄金。
そこにはギュウギュウに詰め込まれた卵焼きがあった

「お返し…?」「アハハ!嬉しいねぇ!気に入ってくれたみたいだv」

借りは作らないとはこういうことか。
意外な一面もあったもんだ。なんだか気が抜けちまった


夕飯は大量の卵焼きが追加された。
大作は大喜びだが俺には甘すぎる味付けだ。
自分で作ったのだろうか?シェフにしては不恰好すぎる。
料理できたんだな…
でもコレを見る限りまだ帰ってきてねぇみたいだな…
また今も一人か…


暖かい食卓の光と卵焼き。
そんな中俺は隣のおっさんが気になって仕方が無かった

明日も行ってやろうか?

それとも今夜か?

みんなが寝静まったのを確認して起きだして、布団に潜り込んでやろうか?

あいつの驚いた顔が見てぇ

ツマンなそうなあいつの顔

少し揺らしてやったら、

違う色を見せやがった


「あんた何ニヤニヤしてんだい?」

「あ?いや、お前は今日もキレイだなーっとv」「バッ!///心にも無い事言ってんじゃないの!」

ボカ!


俺はその時、新しい興味の対象が増えた気持ちでいた

そう、あいつだって、思っていなかっただろう

こんなことになるなんてなぁ―…










■失楽園3 「ワイングラス」